ページ内のクイックリンク
  1. このページの本文へ
  2. サイト全体メニューへ
  3. サイト情報メニューへ
  4. お問い合わせへ
  5. サイトマップへ
HOME  >  協会の助成活動  >  笹川科学研究助成  >  採択情報・選考総評  >  平成28年度数物・工学系総評

採択情報・選考総評

平成28年度数物・工学系総評

数物・工学系選考委員会委員長

  1. 全体の印象と要望
    全体に申請レベルは上がっています。昨年度より、申請内容のレベルが高く激戦という感じです。
    全般的に宇宙論、スピントロニクス、強い電子相関など、今まさに物理・数学やその周辺の科学の最前線のテーマが昨年同様多かったのは当然として、表面張力など長い歴史のあるテーマもありました。素粒子論関連も目につきましたが、ヒッグス粒子の定着や梶田氏のノーベル賞の影響を反映してか、いわゆる標準理論を超えるための新たな理論を目指したものが目に付きました。

    面白いと思った例を挙げますと、気球に電波望遠鏡を搭載して超巨大ブラックホールを観測しようというものがあります。GPSを使って高々度成層圏に気球を揚げて、精密指向制御しようという宇宙研の若手女性研究者のものです。そのためクレーンの免許等を取得することから始めるというのですが、うまくいって欲しいものです。また惑星上の探査機のダストを静電クリーニング法で除去するというアイデアも面白く感じました。理論研究も歓迎しますが、その研究が一般化されたらいかなる問題と結びつくのか、を説明して欲しいです。たとえば結び目図式の基本変形に対応する代数系の研究といった場合、それがたとえば遺伝子組み換え酵素の研究とどう結びつくのかまで、見通しが欲しいところです。

    テーマの種類によって申請書としてのレベルに違いはないのですが、一般的に言って、現在活発に行われている分野ほど研究全体が大規模化する傾向があります。最先端の研究が総力戦の様相を呈し、若い研究者がそのごく一部を担うという図式は止むを得ないのですが、本研究助成の趣旨からすると、この種類の研究に関係する研究申請をどのように評価すべきか、非常に悩むところです。研究内容が、大きなジグソーパズルの一つのピースのように形も入る場所も初めから決まっているものなのか、あるいは申請者の独自の発想で、大規模研究からはみ出したものなのか、は外部の人間には容易に判断できません。

    この種類の申請書には是非背景となる事実を簡潔に述べていだだきたいと思います。審査をする側からも、全く新しい発想や飛び抜けてユニークな考えを誰もそうそう思い付くとは考えていません。現実の研究は、ほんのわずかな差、ちょっとした思い付きなどに基づいて進歩することを知っています。ですから、あまり立派なことが書いてある申請書は一体誰の言葉で書かれているのか、とクエスチョンマークが先に立ちます。
  2. 注意してほしい点
    申請者たちはいずれも大変能力が高く、彼らを評価するには申請書だけの情報では問題が抽象的であるだけに限界があります。年齢的に学部卒後間もない者からすでに実績を積んだ研究者まで幅広く、それに応じて研究業績もこれからという発表なしから立派な高い評価を受けたものまで広い幅があります。応募時点での研究業績によって優劣を評価するのは本助成の趣旨と合いません。申請時の研究業績より萌芽性、新規性、独創性が重要と考え、これを重視して判定しています。

    実験関連の申請では当然単独の研究はほとんどなく、何らかのプロジェクトに関わるもので、そこでの申請者が果そうとしている部分を申請書から読み取るのはいつものことながら難しい。結局申請書の情報から関連ホームページを探しだし、評価の資料の補完としたりしますが、その際、申請書や発表されている研究業績からとは異なる面も見えてくることがあります。

    そこで、この種の研究環境にある申請者への提案なのですが、大きなプロジェクトの中の申請者の位置、申請者の身近な研究環境と提案内容の関係など、申請者の立ち位置を明確にした上で、そこに何を足そうとしているのか、という視点で研究提案をしていただきたいと思います。小さな一歩であっても、すでに皆が走っているn次元の空間からn+1次元目にベクトルの向きが飛び出したものであれば、評価したいと思います。
    指導者の下請け仕事と思われるようなものは高く評価することはできません。また、特にグループ研究では発表論文の著者名を発表順に明示すべきです。誰が first author なのか分からないような表記はすべきでありません。

    指導の先生方へのお願いですが、推薦書は本人の力量がわかる書き方でお願いします。審査過程の重要な判断参考になるものです。テーマの宣伝に終始して候補者への言及がないものもありました。なかには本人に書かせたものとしか思えないものも見受けられますが、これなどは論外です。
  3. 研究経費について
    研究予算の記述が雑なものが目につきます。研究計画と予算との整合性も採否の重要判断材料です。主な研究経費が研究を遂行する上で不可欠であることが分かるように記述して欲しい。単なる図書・コンピュータ・装置購入のたぐいは減る傾向にありますが、アルバイト謝金・検査依頼や講師謝礼・論文投稿費・英文校閲費などに研究費の大半を充てるなどというものもありました。申請額の上限は100万円ですが、研究上それらが真に必要なものか十分検討してほしい問題であります。高額な備品項目を申請する場合、それが申請者の研究計画とどう関連するのか、明記することが必要です。

    海外発表、打ち合わせ目的の海外渡航費などの申請も増えていますが、研究遂行との関連希薄なものが見られます。選考委員会としては、助成金額の総額に制約があり1年単位でもあることから、研究そのものの助成を主とし、内外旅費等はあくまでも従とする立場です。本会には、成果が得られた本助成金研究者に対して、後年度に、海外発表旅費を助成する制度もあることを念頭に置いてください。
このページのトップへ