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採択情報・選考総評

平成28年度化学系総評

化学系選考委員会委員長

 まず、化学系に申請された研究内容を分野別に示します。有機化学分野における今年度の研究課題の傾向として、生物有機化学的研究が増加していることが挙げられます。たとえば生理活性天然物と標的タンパク質との相互作用の解析や、生体内で産生される活性酸素、一酸化窒素など生体機能関連物質の検出法の開発などがその例です。また、生物有機化学の研究から得られた構造活性相関に関する知見に基づいて新しい作用機序による医薬品の開発等が目立ちました。一方、有機化学分野の伝統的な研究課題である新反応の開発や天然物の全合成研究は、相対的には依然として主流ですが、研究対象が異なるだけで新鮮さに欠けるものが多く、合成の方法論の観点から独自性をアピールするものは少ないように思われます。ものつくりの方法論としての独自性、萌芽性を含み、適用範囲の広い反応が開発されることを期待します。

 生体分子を含む高分子化学・超分子化学の分野では、基礎を固める、いわゆる地味な研究は少なく、ソフトな機能材料に軸足を置いたものが多く見られました。本助成の趣旨に照らしてみますと、現時点では陽が当たりにくい根幹のテーマでも将来多方面への波及効果が期待できそうな研究がでてくることが期待されます。
材料化学・無機化学・分析化学の分野の申請数の動向については、金属錯体、クラスター分子、ナノシートなどのテーマ並びにシミュレーションを中心とした研究内容が増加していることが目に付きます。それに対して、地球化学やいわゆる無機分野に関するテーマは減少傾向にあります。やはりこの分野でも出口指向の研究が増えているようです。

 申請書の記載内容については、多くの申請で、記載内容に自らのアピールポイントを分かりやすくするような工夫が見られ、また、設問に対して的確な内容を記述しているものが多く見られました。多様な視点で化学現象、物質、性質を捉え、独自の工夫をして新しい化学を切り開く逞しい若い化学者たちに大きな可能性を感じて、刺激を受けることもありました。

 その一方で、研究室で行われてきたテーマや物質を受け継いで粛々と成果を出そうという意図がはっきり見える計画の申請もそれなりの数ありました。しかし、笹川科学研究助成は、若い人の、従来の枠を壊して新しい科学の体系を目指してみよう、という趣旨をもつ研究助成だと思います。推薦状をご用意いただく先生方にもその点にご留意いただき、萌芽性に富み申請者のオリジナリティーと情熱がにじみ出る申請書が作成されるよう、ご指導いただくようお願いしたく思います。

 化学を始めたばかりの学部4年生や大学院1年生諸君に伝えたいことがあります。申請書に皆さんが書いた化学研究の計画の完成度や洗練度は、数年の経験を積んでいる先輩方のそれに敵わないのは当然だと思います。しかし、いろいろ知っていないからこそ気がつく、未発見の重要な現象や挙動もあるはずです。皆さんは、何が分からなくて、何を知りたくて、どのようなことをしたいと思っているのか、申請書に書いてみてください。その上で先生に指導を仰いで、自分の色がにじみ出る申請書を完成させてください。先生方には、そういう形でのご指導をお願いしたく思います。

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