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採択情報・選考総評

平成28年度生物系総評

生物系選考委員会委員長

 生物系の場合、共通して生命現象を対象としていますが、アプローチが多岐にわたり、しかもそれぞれが高度に専門化してきており、さらに申請件数が極めて多数のために、採択研究が特定の分野に偏ることがないように、分野を分けて審査を行なっています。

●生理・発生・分子・生化・遺伝などの分野

 本年度も力の入った多くの申請を審査し、若い研究者の熱気、向上心、意気込みを感じて嬉しく思っています。
申請者の年齢や学年・職も多岐にわたり、それは審査をする際の判断に当然影響を与えます。しかし本助成では、過去の業績にはとらわれずに、陽の当たりにくい、しかし独創的な研究で あって、1年間で達成できる内容に高い評価が与えられることを銘記して頂きたいと思います。

 ポスドクなどの比較的経験を積んだ研究者からの申請では、通常は学術雑誌に研究成果をすでに発表している例が多いわけですが、その場合、これまでの研究成果が、どの発表に対応しているのかを記述してもらえると、研究の内容を審査しやすいのです。またその上で、今回申請する研究計画が、これまでの研究成果とどのように関連しているか、もしくは全く新奇な研究であるのか、そのあたりを明確に記述して頂きたいと思います。
一方、修士課程の学生は多くの場合公表された成果はないわけですが、その申請内容が理にかなっていて、また新規性が十分に見て取れるのであれば、高い評価に結びつきます。ただ今回、「将来科学研究費の申請をするためのトレーニングのつもりで応募した」と書かれている申請が複数見受けられました。気持ちが分からないわけではありませんが、やはり審査をする側としては、複雑な心境になりました。是非とも真剣勝負の書類を書いて頂きたいと願っています。

 これは、毎年のことですが、独創性をアピールするために「このような実験はこれまで全く行われていない」と記載されている申請書が多く見られます。実際には、特定の生物種や細胞種、特殊な条件などを用いた普遍性に欠ける実験ほど、過去に同様の実験が行われているケースは少ないので、過去に実験が行われていないことだけでは、独創性を示すとはいえません。研究目的の重要性と、アイデアの新規性をきちんとアピールすることが肝要です。

 また、評価に当たって重要なポイントの一つは、実施計画がリーゾナブルであるか否か、ということです。計画が、「・・を調べる」「・・を検討する」などと書かれているだけで、実際にはどのようなことを行おうとするか、明らかでない申請が見受けられます。他方、膨大な実施計画を記載して、これはとても1年間では達成できないだろう、という申請もあります。1年間である程度の成果が上がるような実施計画と、それに見合った研究経費の計画を立てる必要があります。

 研究テーマについて、依然として遺伝子の機能解析に関わる研究、がんを含むヒトの種々の疾病に関わる研究、iPS細胞など幹細胞からの分化細胞の誘導に関する研究が多いこと、などが特徴的でした。それらのうちいくつかは、目的も実施計画もよく練られていました。この傾向はまだ今後も続くものと思われます。一方採択された課題の中には、ヤモリの代謝制御、虫害とカフェイン合成、ニワトリにおけるうま味の解析など、幅広い生物現象を扱う研究がありました。

 生物学では、実験材料の選択が重要です。一般にはいわゆるモデル生物がよく用いられますが、本助成の申請では非モデル生物も多く登場して、その差は段々小さくなっている印象があります。その理由の一つとして、次世代シークエンサー、ChiP解析、RNA-seq、CRISPR-Cas9などの新技術の普及によって、非モデル生物でも分子的アプローチが容易になった、ということがあるでしょう。この傾向も、今後も続くと予想されますが、これらの先端的で費用のかかる研究だけでなく、安価であっと驚くような手法を使った研究にも挑戦して頂きたいと思います。

 笹川科学研究助成の学術研究部門には、「複合系」があります。生物系への申請の中にも、テーマが境界領域の研究であって、複合系への申請を考えてもよいのではないか、と思われるものがあります。申請に当たっては、自分のテーマがどの系に一番適合するかを、よく考えて頂きたいと思います。

●分類・生態・農・水産学などの分

 当該分野の申請内容は、フィールド系、実験系、モデル系の多岐に渡り、また、高度な研究計画もあり、大変喜ばしいことです。しかし、採択件数に制限があり、一部採択できなかったことは残念です。当該分野を担当した審査員の多くが感じた、全体に共通したことは以下の三点です。

 第一は、生物のマクロ分野の研究申請件数はあまり変動していませんが、研究内容は大きく変化してきています。以前は、対象生物として動物と植物の研究申請数が多く、それぞれ同程度の割合でしたが、最近では、動物と微生物を対象とする研究課題が多く、植物が少なくなっています。研究アプローチでは、分子的手法を取り入れたものが多くなり、進化や種分化はもちろんのこと、環境DNAなどまで研究対象の幅が広がっています。一方で、比較発生や、フィールドでの地道なしっかりした研究課題も多く、研究への多様な取り組みが感じられました。

 第二は、全体的に、研究の着眼点は素晴らしいものが多かったのですが、中に研究内容が盛りだくさんで一人が1年の研究期間では到底実施できそうもない計画がいくつかありました。また、研究計画の中には、壮大な研究の1つのパートと感じられたり、あるいは指導教官の研究をそのまま実施しているようなものも見受けられ、個人の単年度研究という自覚をもって、研究計画を作成していただく必要性を感じました。

 第三は、研究経費の支出計画では、“研究費”の項目に、例えば「試薬類50万円」のように、具体的な内容がくみ取れない申請書が少なからずありました。研究を立案し、遂行するためには、支出計画はその裏付けになる大切な部分なので、備品や消耗品の使途・算出、そして、調査・学会発表の旅費などに関しては、研究計画との対比の中で、より丁寧に書いていただければと思いました。

 以下は、各審査員が感じた個別の印象です。これらは必ずしも全体には当てはまりませんが、今後、研究計画をまとめる際の参考にしてください。

  1. 追跡機器を利用した生態・行動研究、分子遺伝学的手法を用いた集団構造についての研究などでは、研究手法に引きずられずに、研究の視点や目的を明確にする必要があります。
  2. 保全を目指した研究では、研究の成果が保全にどのように生かされるかについて明確にする必要があります。
  3. 「植物は眠るか」、「宇宙農業」などの奇抜なタイトルは一時的に人の目をひきますが、研究計画申請書としては具体的な研究内容の想像できるタイトルの方が適当です。
  4. 研究のために海外から試料を持ち込む必要のある場合は、植物検疫などに抵触しないような注意が必要です。
  5. 実験で本来生息していない種を扱う場合には、野外実験はもちろんですが、室内実験でも、実験生物の取り扱いに関する細心の注意を払った計画が必要です。
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