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採択情報・選考総評

平成28年度複合系総評

複合系選考委員会委員長

 複合系分野は、さまざまな研究分野にまたがるので、代表的な研究分野によってテーマを分類し、採択される研究テーマの分野が偏らないように注意して審査しています。以下に、分野別の総評を行います。

生物分野

 今年度も生物分野の研究計画には優れたものが数多くあり、予算の都合上、採択を断念しなければならないケースが多くありました。それぞれの申請に対してコメントを書いておきましたので、来年度以降も申請の可能な方々には、是非、再チャレンジしていただくことをお勧めします。今年度の研究計画を拝見していて感じた点を以下にとりあげます。

  1. 研究計画に数多くの課題を盛り込み、遠大な研究課題を掲げているケースがありました。1年間の研究期間を考慮して重点的に研究する内容に絞る必要性を感じます。
  2. 簡単には入手できない生物試料については、入手方法の記述を忘れないようにお願いします。
  3. 研究の主体が実験・観察の関心にあり、その研究によって究明できる課題への論理的な説明がないなど、お粗末な計画がいくつかありました。
  4. 文学研究科の大学院生が、人文科学系と自然科学系の両方にまたがる内容の研究計画で申請していて、“複合系”専攻分野の存在意義を感じました。

化学分野

  1. この分野では、例年通り、生化学あるいは医化学関連の研究が多いのですが、本年は、特に、タンパク質を研究対象とした申請がその半数近くを占めました。ただし、タンパク質との取り組み方は、構造の解析、分離技術、機能の利用・転用など多彩です。
  2. 研究自体の質の高さに加え、できばえの良い申請書が多く、選考は一段と難しくなってきました。レベルが僅差の申請については、助成の必要性の強さが判定を分けたケースもあります。
  3. 研究暦の長い研究者ほど、アピール力の高い核心をついた申請書を作成しています。それが、高年齢者(当然35歳以下ではあるが)が比較的多く採択された一因となっているかも知れません。

人間科学分野

 今回の申請をみると、プリミティブで萌芽的だが、独創的な発想の研究が多く、本研究助成がサポートしている新しい領域創成の芽を感じました。
また、本研究助成は、重要だがメジャーになりにくい研究を行っている研究者にとって重要な研究助成となっていますが、「面白いネタでやってみたい」という研究は通しづらい感があります。そのような研究は、予備実験結果が必要です。

 生命原理からその可能性・実現性を見通す「生命の知恵」を予感できる研究や、生活の中で生まれ引き継がれてきている「生活の知恵」が背景にあれば、それらこそホンモノの研究に発展し、今まで抜けていた生命のプロセスを顕在化させる研究が発展する可能性があります。

看護分野

 毎年、この分野は間口が広く、研究テーマも多岐に亘り選択に苦慮します。本年も例年以上に苦労しました。テーマは実験的な問題から医療機器の回収etc 社会的、経済的に関わる問題等、幅広く、それぞれ今日的課題であるだけに何を重視するかに苦しみました。採択数に限りがある為、やはり我国が現在直面している高齢者問題やそれに関わる課題を重視せざるを得なかったのですが、医療が単に“与えられるサービス”であるだけでなく、セルフ・ケア、セルフ・モニタリングなど日々の生活の中で自らが行動して再発を予防する方向を探る研究が出てきていることは大いに歓迎されます。また、今回初めて医療機器の回収に関する研究が出てきましたが、これは医療工学や医療経済などもっと大きな分野で扱うべきテーマであり、1個人のテーマには向かない感じがします。時代の進展と共にテーマが変わるのも面白いと思いました。

地球科学分野・教育分野

  1. 応募件数が多かった研究領域
    (1)主として地質学に関する研究
    この領域では、重力流堆積物の構造分析によるその形成過程の解明、沈み込み帯における粘土鉱物や珪長質メルトの形成に関する研究、マントル物質の実験学的手法による沈み込み機構や地震発生への影響解明、腐食物質供給やサンゴ礁州島の土壌化の過程解明などの研究が10件ほど見られました。
    (2)化石を取り扱った研究
    この領域では、有孔虫、二枚貝類、シロウリ貝類、アンモナイト類、オウムガイ類、恐竜類、クジラ類などの化石を題材としたものが8件ほどありました。その研究課題には、例えば微化石と古地磁気などを組み合わせた年代層序の組み立て、アンモナイト類の繁殖生態の違いと形態のばらつきの関係の解明、頭足類顎器からの食性復元手法の開発、クビナガリュウの胃化石を基にした遊泳履歴の復元、クジラ類の耳小骨に着目した進化に関する研究などが見られました。
    (3)そのほかの領域
    前年度に引き続き、海洋、河川、湖沼の堆積物に着目し、土石の移動や洪水、古気候復元に関する研究が5件、河川系や扇状地などの地形形成過程に関するものが4件、堆積物から古気候の推定を行うものが2件、教育に関わるものが3件見られました。
  2. ユニークな課題
    (1)孵化サイズに着目した異常巻きアンモナイトにおける繁殖生態の復元
    異常巻きの中のPolyptychoceras属は同種であればあるほど殻形態のばらつきが大きいのに対してHyphantoceras属では同種であればあるほど形態のばらつきが認められないことをみいだしています。アンモナイト類では、孵化サイズが復元可能であるから孵化前後の浮遊幼生期間と殻形態のばらつきを結びつけるという発想で研究を推進するものがありました。
    (2)外来種教育の手法の検討と定着に関する問題点
    外来種問題の社会での認知度は低く、環境省でも学校教育への導入を急いでいます。北海道の外来種カブトムシの野外基礎調査を済ませており、専門家としての出前授業(逃がさず最後まで飼育させる)等の実践を積み上げ、その結果を科学的に検討して博物館や学校で使えるプログラムの作成が期待できます。

その他の分野

 今年度は、特に、土壌に関係するテーマが目立ちました。土壌学、環境学、造園学、農学、森林学の分野です。土壌の化学、土壌と微生物、屋上緑化、植生、酪農など、土壌は、さまざまな局面で私たちの生活と結びついています。鉱物も、地球内部の構造、隕石と関連して、豊富な研究テーマを提供しています。微生物と鉱物の相互作用を調べるというようなユニークなテーマもありました。

 今年度は、地域的な研究テーマも目立ちました。特定の地域を研究対象とする研究です。ネパールの地震で被害を受けた地域の復興計画、同じくネパールの洪水被害にあった地域の社会学的な研究、中国の都市再生計画、アンコール遺跡にある湖沼の生態系の問題、白神山地と地域住民との関連などです。地域研究は、重要性がはっきりしている反面、研究の広がりに欠けます。実践分野に申請する可能性も考えていただきたいと思います。

 ロウソクの炎の振動に関する研究のような好奇心で行う研究テーマもありました。このような研究は、研究助成が得にくいテーマですが、萌芽的な研究を重視する笹川研究助成の対象となります。これからも、独創的な発想の研究が申請されることを期待したいと思います。

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