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立方体地球-Cubic Earth-

立方体地球プロジェクトを振り返って

なぜ立方体地球なのか

東京大学名誉教授 木村龍治
 この事業の企画に、最初から関わった委員の一人として、立方体地球を考察するに至った経緯を述べてみたい。10年以上前の話になるが、事業部長の鳥越さんが、現在の博物館、科学館の企画が子供寄りになっていて、大人が楽しめるようなレベルでない、という問題意識をもった。すべては、そこから始まったように思える。彼は、このような現状を打破する方法として、特定のテーマで、10個ほどの(大人も興味をもつような)実験装置を作成し、それを博物館・科学館に貸し出すイベントを企画した。テーマとしては、水、光、素材を候補とした。水といっても範囲が広い。自然界の水に関連して、「台風が来た」というテーマで、10個ほどの実験装置を作製し、全国の博物館・科学館を巡回した。第2弾として、光をテーマとして、同じように10個ほどの実験装置を作成し、全国の博物館・科学館を巡回した。第3弾の素材に関しては、携帯電話をテーマにして委員会を立ち上げ、かなり議論を行ったが、日本科学協会の都合で、この企画は中止になった。

 「台風が来た」の紹介は、インターネットでも行ったのであるが、鳥越さんは、このサイトの延長上に、台風だけでなく、気象全体を紹介するサイトを立ち上げたいと考えた。そこで、気象物語委員会が組織されたのである。気象物語委員会は、まず、現在、公開されている気象関連のインターネットサイトの調査を行った。それで分かったことは、既に膨大な数の気象関連サイトがある、ということである。しかし、いずれのサイトも、気象に関する断片的な知識を提供する。気象全体をシステムとして理解させようとするサイトはないことに気がついた。知識の提供ではなく、気象を考えさせるサイトを構築すれば、気象教育に役立つはずである。しかし、どのような方法で気象を考えさせればよいのか。かなり、時間をかけて議論した。その中から生まれたのが「空想気象学」という発想である。現実とは異なる設定条件を与えて、その上の環境を考えてみようという発想である。その場合、現実の環境に関する知見は、ほとんど役に立たない。論理的な基盤の上にたって、一から環境を構築することが必要である。まさに、考える気象学である。

 現実と異なる設定といっても、その範囲は実に多い。いろいろな候補を上げて議論したが、最終的に、地球が立方体であったら、大気と海洋はどうなるか、という問題を設定した。かなり時間をかけて、この問題を議論した。その結果は、インターネットの立方体地球の詳しい解説として公開した。しかし、解説だけでは分かりにくい。そこで、議論した内容を映像化して示そうと考えた。映像製作のプロの力を借りて、part1とpart2の映像を作製した。この映像を教材にして、考えさせる気象教育を行うことを期待している。

 出前授業で映像を使う場合、以下の点に注意してほしい。同じ映像でも、part1とpart2では、かなり性格が異なる。part1では、地表面に大気だけが積もっている世界である。比較的単純で、科学的な考察も易しい。そのため、part1の映像は誰が作っても、同じ内容になるだろう。ところが、海のある側面の世界は非常に複雑である。さらに、そこに生物が存在するとなると、生物の進化の過程も考察する必要があるわけである。しかし、実際には、地球以外に生物がいないので、そのような考察は、ほとんど科学的な意味がない。そこで、part2は、科学的な根拠のはっきりしない設定をせざるを得なかった。この映像に示されたことは、立方体地球上に成立可能な無数の環境の一例である。それを宇宙飛行士が体験するというドラマに仕立てた。それはファンタジーに近いが、複雑な自然環境を考えるヒントになることを期待している。

わからなくてもいい。おもしろければ。

京都大学大学院教授 酒井敏
 わからないから面白い。本来、好奇心とはそういうものだ。「正解」があって、誰かがそれを知っていると思ったとたんに面白くなくなる。この物語にも正解はない。ほかにも、いっぱい可能性があるはずだ。生物は、そのような可能性をたぶんしらみつぶしに探って、最適解を見つけてくる。そこには、たぶん「論理」などもない。効率は悪いが、結果オーライなのだ。

子供は生物として本能的にそのような空想を広げる能力を持っている。効率化した大人の貧弱な思考を子供に押し付けるのはもったいない。彼らにはとことん妄想を広げてほしい。
もちろん、妄想のほとんどは現実には成立しない。それを身をもって知ることは、もっと重要である。しかし「身をもって知る」ためには、まずは妄想しないと始まらない。そして、ごくごくまれに、その妄想が当たることがある。「発見」とはそういうところにあるのだ。既知の知識を論理的に積み上げた先に発見が必ずしもあるわけではない。

 今、世の中の多くの人は「既知の知識を真面目に勉強すれば、将来の難問が解決できる」と思っているように見える。これは極めて危険な思想である。既知の知識の中に、未知の問題の解答がある保証はないのだ。この危険思想から子供を解放したい。それができたら、この物語は大成功だろう。

5年間の思いで

東京学芸大学教授 松田佳久
 「気象物語」の会合が始まってから、既に5年間が経過するという。歳を取って来ると時が立つのを速く感ずる、と言いたい所だが、この会は結構長かったな、というのが実感である。
木村先生に、声をかけられて参加したときは、正直言って、何をする会なのかさっぱり分からなかった。最初は、木村さん、宮田さんと3人で、鳥越さんの前で楽しく気象などの問題を議論していれば良かった。その後加わった森さん、名越さん、松山さん、酒井さん、高橋先生の議論にも多くの事を学ばせてもらいました。専門分野の様々な問題を色々な角度から、好き勝手に議論するのは、楽しいだけではなく、有益である。特に、地学は物理、化学、生物(ミクロな生物学?)が最初から理想化された実験室の対象(多かれ少なかれ要素に還元された対象)を扱うのに対して、具体的な生の自然を扱うので、断片的な研究だけではなく、様々な角度からの考察の総合が必要である。

 本来ならば、異なった専門家の集まりである大学がこのようなゆとりのある楽しい議論の場であるはずである。ところが、現実の大学はその正反対物に転落している。非常に狭い断片に関する論文製造に凝り固まっている。しかも、今の大学の困った所は、教育と称して学生を論文製造に利用している事である。学生の視野を広げるのが教育の目的とすると、大学の研究室では断片的研究の作業をやらせて視野を狭めている、つまり反教育が行われている。

 大分前から、理学系の先生が数人集まると、学生の質の低下の嘆きと、優秀な学生から(就職して大学から)いなくなるという嘆きが交わされている。大学に残っていても職がないという問題は我々が学生の時にもあった。従って、優秀な学生からいなくなるのは、単に研究職がないからではないだろう。今時の大学の先生のやっている事(断片的論文製造)に魅力がないのである。また、最近はマスコミがノーベル賞受賞者などの人や研究紹介また最先端の研究紹介(スタップ細胞?!)を熱心にやっているが、これも逆効果なのではなかろうか。意識化しているかどうかは別として、優秀な若者から見ると、「いかにも偉くなさそうな人が特殊な事に関して一発当てただけ」という印象を受けるのではなかろうか?

 少し話が脱線したが、「気象物語」は前半、今時の大学や俗世の研究機関とは打って変わって、楽しい有閑サロンだったと言いたかった訳である。私も楽しく多くの事を学ぶ事が出来た。その点、木村先生と鳥越さん(日本科学協会)に感謝いたします。
 しかし、何事もただ飯という事はあり得ないので、「気象物語」も後半は映像の作成に取りかかる事になりました。大の映画ファンである木村さんと違って、私は映画の類いに全く素養がないので、よく分からなかったが、それでも、林さんを初めとして、極めて優秀なスタッフが優れた映像を作成された事が実感できた。これも貴重な経験でした。

 最後に、映像作成に必要な計算をほとんど全部、森さんに押し付ける事になってしまいました。この点、本当に申し分けないと思っています。森さん、有り難うございました。また、最後の大事な時に体調を崩し、何もご奉仕できず、結局役立たずで、誠に申し訳ありませんでした。

宇宙史の中での立方体地球と私

桜美林大学教授 森 厚
 人類の歴史を宇宙の歴史の中で位置付ける「ビッグヒストリー」というプロジェクトがある。そのプロジェクトの興味深い点は、複雑性の発現についての考え方である。通常、混ぜてしまった絵具を、元の色に分離することはできない。自然界では、構造をもったものや、特徴をもったものは、かき混ぜられ、ほぼ均一な状態に移行する傾向がある。ところが、明らかにそれとは逆の現象が起きている。ほぼ均一な状態であった宇宙の初めから考えると、人間のような複雑な構造体が構成され、更に人間はより複雑な構造体を作成しているのは、驚異的なことである。現実には存在しないであろう立方体地球を宇宙中で考察できるのも、複雑な構造体を創作できる人間の知的活動によるものである。

 人類はどうして複雑なものを創造する能力を得ることができたのか。それは、遺伝学的な学習を越えて、文字などの情報を通じて経験や知識を継承することができたからである。立方体地球にかかわる考察も、過去の気象学者の研究成果なしには語ることができない。そして、この立方体地球に関する考察も、多くの人々に継承すべき内容を含んでいる。

 それでは私たちが立方体地球を考察したことによって継承すべき知識や経験とは何か。それは「常識」から自由になることである。人間は、自分自身の経験や学んだことによって世界観を作り上げていくが、同時にそれは、その世界観によって形成される「常識」に拘束されることでもある。柔軟に自由に考えることは概して難しい。実際に、立方体地球を考える過程で、私たちが「常識」に捕われていること痛感した。立方体地球に接する皆さんにもそれを追体験していただきたい。そして、自分自身を「常識」から自由になるようにしていただければと考えている。いわば、立方体地球は自分を「常識」から解放する道具である。

 人類が黒曜石(ガラス状の石)に偶然、出会った結果、黒曜石を使った道具を開発し、後の人間社会を変えていった。立方体地球という道具が開発されたのも、偶然の産物である人と人との出会いによる。木村先生との関わりは、私が高校生の時にお手紙を差し上げ、お返事にご著書「流れの科学」をお送りいただいたのがきっかけで、以来大変お世話になっている。プロジェクトの諸先生方とも重層的な出会いがあった。木村先生から「森さんも来ませんか?」とお誘いを受けたのも、いわば偶然である。スティーブ・ジョブズ氏が講演で「点と点が繋がるのは後になってからわかることである。」といった趣旨の話をしている。立方体地球という偶然の産物が、後になってみれば、必然的であるように思えるのも、ひとつの継承すべき事実かもしれない。

 個人的に、今回のプロジェクトでメンバーの先生方とディスカッションする場を得られたのは大変ありがたいことであった。私自身にとって多くのいろいろな意味での発見があったプロジェクトであった。そして未完のプロジェクトでもある。現実の地球についての気象学研究が継続して行われているのに、始まったばかりの立方体地球の研究がこれで終わるはずがない。宿題が沢山あるので、今後も継続して考えていきたい。

 最後に、プロジェクトの途中で亡くなられた宮田先生のご冥福をお祈りいたしたい。また、宮田先生が興味を持たれていたサンドストロームの定理についての議論を整理することを自分に課したいと思っている。

「気象物語」の思い出

首都大学東京准教授 松山 洋
 思い起こせば5年前,2009年の6月に,初めて日本財団ビルに足を踏み入れたのが,つい先日のことのように思い出されます。同じ時に「気象物語」企画・編集会議に呼ばれた名越利幸さん(岩手大学)の娘さんが,実は小職の勤務先(首都大学東京 地理環境コース)の学部1年生だったことを知ったのもつかの間,最初の1年間ぐらいは会議に参加するたびに宿題が出るため,大変辛い日々でした。当初の「気象物語」は,別紙の図の解説を作ることが目的だったように思われ,小職は「時間の気象物語」と「局地性の気象物語」の原稿を書きました。しかしながら,これらの原稿は結局,陽の目を見ることなくお蔵入りすることになりそうです。

 「気象物語」における小職の役割は,「気象と人間生活」に関してアイディアを出すことだったと理解しております。しかしながら「もしも地球が立方体だったら」前篇の,「海のない側面の立方体地球」は,人間が生活するどころでない環境に変わり果ててしまったことは,前篇を御覧いただければ御理解いただけると思います。結局,前後篇を通じて小職が貢献できたのは,唯一,後篇のハビタブルゾーンに出てくる「ロマスの群落」のアイディアを出したことぐらいだと思います。

 このたび,「もしも地球が立方体だったら」前後篇の映像が完成したのは大変喜ばしいことです。しかしながら,後篇の完成を目前にした2013年8月に,「気象物語」企画・編集会議メンバーであった宮田元靖さん(放送大学)が亡くなられたのは,大変残念なことでした。「気象物語」企画・編集会議が終わった後,博識な宮田さんと木村龍治先生(「気象物語」コーディネーター),そして小職の3人でお話をしながら帰途につくのは,大変楽しいひと時でした。宮田さんも天国で,前後篇が完成したことをお喜びいただいていると思います。改めて,宮田さんの御冥福をお祈りします。

 この5年間,ほぼ毎月1回のペースで日本財団ビルに通っていたため,小職にとっては「気象物語」が生活の一部になっていました。そのため,映像の完成と引き換えに,「これで日本財団ビルに通うこともないのか ... 」と寂しがっている自分もいます。その一方,「気象物語」に呼んでいただいたおかげで,「平成7年度笹川科学研究助成」を頂いたまま長期間放置してあった研究(岩手県石鳥谷町「たろし滝」のつららを用いた天候予測に関する基礎的研究)をまとめることができました(尻に火がついた!)。また,日本科学協会の商議員やサイエンスメンターとしてもお声をかけていただきました。人と人はどこでつながっているか分からないもので,このような御縁は大切にしていきたいと考えています。

 「気象物語」はこれで一段落ですが,小職と日本科学協会との付き合いはまだまだ続きそうです。今後ともどうぞよろしくお願いします。

理科教育学から見た気象物語

岩手大学教授 名越利幸
 この気象物語は,木村龍治東大名誉教授を代表とする気象学者,海洋学者,理科教育学者ら計7名によって構想が企画された。そもそもの発端は,我が国の一般市民が培っている科学リテラシ-が,PISAなどの国際調査で,参加国中常に最下位近くに位置している。科学技術立国であるはずの日本,知識・理解偏重の学校教育,義務教育における理科離れ,高等学校における生徒実験の激減(3年間に1回も),今我が国の理科教育にとって由々しき事態が生じている。一般市民に,気象に興味・関心を持ってもらい,気象リテラシーを培ってもらう。そのために,8つの物語とその中心に気象学の基礎を含む気象物語の全体像を構想した。

 これまでの教育における知識・理解偏重に対し,科学的思考を重視した。空想の物語「立方体地球」というとあたかも突飛なばかげた内容に見える。なぜ,?と思った方々が多いであろう。 
 理科教育学では,反証実験というものがある。児童の持つ素朴概念を覆すような反証事象を提示し,正しい認識を導くことを指すものである。この極端な事例として,「Cubic Earth」が該当すると言える。立方体を考えることにより,丸い地球の意味をさらに理解することができ,現実の地球の「気象の学び」も深まると考えた。つまり,突飛,ばかげているからこそ,真摯に考える必要があると捉えた。

 8つの物語とは,時間の物語,南北の物語,高度の物語,光の物語,粒子の物語,生活の物語,海洋の物語,空想の物語である。その物語の基本に,気象学の原理がまとめられ,物語を学ぶ上で,気象学の基礎知識が必要となる。これら物語の一つが,空想の物語である。我々は,28の空想の物語を提案し,その中で,映像班(映像作製担当)が選択したのが,「Cubic Earth」である。このテーマは,非常に難しいテーマであった。しかし,立方体の重力場を,スパーコンピュータを一週間走らせ解を得ることができ,より現実的に考えることができた。この事実が気象物語の大きな転換点であったと考える。その後,作製された前篇は,海のない赤道面のデジタルコンテンツ映像である。5年間70回に及ぶ議論をへて,現実の丸い地球での気象学に関してより詳しく学べる様に仕掛けを考えたわけである。その映像を岩手大学教育学部附属小・中で試写した。その感想を持って,後編の作製に入った。多くの数値実験や生物に関する議論を経て今回の後編ができあがった。これらの作製を通し,私は自分自身が科学的に考える力を養ったと考えている。今,日本の理科教育に最も不足しているのは,この科学的に事象を見る力・考える力である。

 是非,「Cubic Earth」をご覧頂き,ばかげた話をまじめに科学的に考えてもらいたい。今まで述べたように,この映像コンテツは,気象物語のごくごく一部である。是非,「Cubic Earth」が世に受け入れられ,将来気象物語全篇が完成することを夢見て,監修者の言葉と致します。

感想文

東京大学名誉教授 高橋正征
 「立方体地球」の前篇が完成し、学校で出前事業をしたところ、生徒たちから、“立方体地球にはどんな生物がすんでいるの?”という質問が出てきたため、後編では生物を取り上げることになり、事務局から私に適当な研究者の紹介依頼が来ました。専門家に参加交渉する前に状況を知ろうと、後編を作業している第46回「気象物語」企画・編集会議(平成25年8月20日)に参加しました。

 会議に出ると、これまでの自然科学にはみられない“空想科学”で、どんな人に声をかけたら良いか皆目見当がつかなくなってしまいました。と同時に、生物分野(生態学)を専門とする私自身、気象学の専門家の皆さんの議論が実に面白く、時間の経過を忘れました。ちょうど、立方体地球の海のある面の環境が検討されていて、“どんな生物が生きられるだろうか”といった疑問が議論されていました。第46回の議事録を見ると“生物関連は、明らかに間違いという内容でなければ、よいのではないか、という意見であった”と私の発言が記録されています。立方体地球での生物を考えるといっても、私たちの知識は地球上の生物から得たものですから、それを基礎に考えることになります。

 当初は、様子見でしたが、次第に抜けられなくなり、それに伴い、海と陸の、それぞれの生態系のイメージを私なりに真剣に考え始めました。その結果、海は十分に広く、生物生産も期待できるので、地球の海と同様の植物・動物・分解微生物の、いわゆる“生食食物連鎖”を、陸は生物の生息環境が日本列島程度の広さしかないというので、森林に似た植物と分解微生物の2者が中心の“腐食食物連鎖”を想定しました。また、生徒たちにとっては、ヒトのような動物の繁栄が身近だろうと考え、さらに地球よりも少し進んだ世界をイメージしました。実際には、会議の議論をもとに映像の専門家が次々と生物を想像していくので、その理屈づけになりましたが。
近代自然科学では、自然現象を尖鋭的に解析する要素還元論で発展してきました。また、解析した結果を組み合わせて現象が実際に成り立つかどうかの検証も盛んです。前者はフォアキャスティング、後者はバックキャスティングといえます。今回の気象物語でとられた“空想科学”の研究方法では、これまで気づかなった角度から新現象を見出す素晴らしい効果があります。これは従来の科学研究とは異なった次元の研究方法ということで、ディメンジョナルキャスティングといえるかもしれません。この方法が自然科学の新しいアプローチとして定着していったら素晴らしいと期待しています。

「立方体の地球」サイト全面公開に寄せて

法政大学教授 藤田貢崇
 「立方体の地球」の映像・インターネットサイトをご覧になったみなさんは、どのような印象をお持ちでしょうか。地球が立方体だったら、なんていうことはSFの世界の話で、こんなことを議論することに一種の驚きを感じた方も少なくないのではないでしょうか。

 SFとはサイエンス・フィクション(Science Fiction)のことです。SF作品にはいろいろなものがありますが、科学的な原理や理論に忠実に基づいて作り込んでいる作品も多く見られます。「立方体の地球」は、地球が立方体だったらどうなるのだろう、という発想のもとに、気象学や物理学、生態学などのさまざまな基本法則に基づきながら制作されたSFです。その裏側には、気象学の基本的な法則を理解してほしいという願いが込められています。

 映像をただ漠然と眺めるだけでは、なかなか気象学の仕組みまでは理解できません。理解を助けるために、インターネット上に解説サイトをつくり、幅広く情報を提供することにしました。解説サイトには、基本的な内容から、一度では理解しにくい難しい内容も含まれていますが、みなさんの興味や関心、年齢に合わせて読み進めてほしいと思います。

 科学は「知りたい、追求してみたい」という気持ちが原動力です。この解説サイトが、みなさんの「知りたい」という欲求をかき立てることができればいいと思っています。立方体の地球やキュービック星人のことなど、みなさんがさらに疑問を抱いたら、知っていそうな人に聞いてみる、あるいは自分から調べてみる、ということをしてみてください。そのような行動をとったあなたは、将来の科学者になるかもしれません。科学の世界は、まだまだわからないことだらけ。そんな科学の世界は、好奇心にあふれた人には最適な活躍の場になることでしょう。

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