日本科学協会では、「科学」を自然科学はもちろん、人文・社会科学といった広い範囲でとらえています。生物としての「ヒト」は、未知のものを知ろうとする性(さが)があり、それが「科学」の基本です。世界的に流行した新型コロナウイルスに関して、原因の特定と対策、さらに情報伝達で「科学」が果たした役割は極めて大きなものでした。科学的知見の乏しかった昔、未知の疫病について人々は恐れ、祈ることしかできませんでした。
「科学」は、私たちの生活を精神的にまた物質的に豊かにしてくれます。しかし、同時に誤用や悪用の問題が避けられません。日本科学協会は「科学」の知識とその利用を社会に広める必要性を強く感じた有志が1924年に創設し、以来、雑誌出版や講演開催などで活動を続けてきました。1975年から日本財団の支援をいただくようになり、それまで社会的支援が手薄だった大学院生を含む若手研究者への研究助成事業を1988年に開始しました。その際、助成の対象を広範な科学の領域にし、国内で研究活動をする外国人を含めた若手研究者を中心にしました。研究助成の採択件数は2020年に約1万件に達し、その半数以上のOB・OGが国内外の研究機関で活躍しています。さらに、子供たちに自身の科学的探究心の強さを気づかせ、また科学研究に関心をもつ中・高校生には専門家によるメンター指導の機会を与え、多様な研究領域での若手の人材育成を鋭意進めています。1999年には、中国の研究者や学生に日本の理解を深めてもらうために教育・研究図書寄贈を始め、あわせて日中の大学生等の相互理解の深化に向けた努力をしています。
日本科学協会は当初の「科学」の普及活動に加え、若手研究者の研究支援、そして小学生から中高校生の「科学」への関心の目覚めに力を貸して育て、未来を担う人材育成に努力してまいります。ご理解とご支援を心からお願い申し上げます。