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公益財団法人 日本科学協会

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立方体地球-Cubic Earth-

気温はどのように変わるの?

立方体地球での季節

 気温は、太陽から降り注ぐ日射(太陽放射エネルギー)の強さによって決まります。立方体地球は、黄道面に対して、23.4度傾いて公転しています(図7)。このため、太陽光線の当たり方が季節によって変化します。自転軸の方向を固定すれば、図2のように、太陽光線の来る方向が季節によって変化します。

図1
図1 : 立方体地球は、黄道面に23.4度傾いて、公転している。
このために、季節変化が生じる。
図2
図2 : 自転軸を固定すれば、季節によって太陽光線の方向が変化する。

立方体地球での昼と夜

側面(自転軸のない面)は、12 時間で交代する昼と夜があります。球の地球では、昼の時間は夏になると長く、冬になると短いように、季節によって昼の時間が変化します。しかし、立方体の場合は、季節に関わらず、また、緯度に関わらず、昼は12 時間、夜も12 時間です。

図3 に示すように、1 日のうちに、日射量が変化します。また、図4 に示すように、最大日射量Sは、季節によって変化します。春分、秋分の日に最大で、S=1370 W/m2です。1 日で平均すると、435 W/m2で、極面の最大値より小さくなります。最小値は夏至または冬至の日で、399 W/m2です。側面には、1 年平均すると、417 W/m2の日射が降り注ぎます。季節変化は小さいといえるでしょう。

図3
図3 : 側面における日射の日変化
図4
図4 : 側面における1日平均日射量の季節変化
図5
図5 : 側面における日射量の季節変化

一方、極のある面(自転軸をもつ面)では、24 時間で交代する昼と夜がありません。半年が昼間で、半年が夜間です。日射量の1 年間の変化をグラフで表すと、図5 のようになります。

気温を考えてみよう

図6 は、このような日射によって、大気のない地面(正方形の周辺部)の地面の温度を計算したものです。極面では、日変化はなく、季節変化のみ存在します。白夜の中程を過ぎると、最高温度2 ℃ に達しますが、それ以降は、温度が下がり続け、極夜の終わりには、−118 ℃まで下がります。日射がある季節は、人間が生きていくことができる温度範囲ですが、極夜になると、極寒の世界になり、とても人間が住める場所ではありません。

図6
図6 : 極面と側面における日射量の季節変化

同様の計算を側面の真空部分に対して行った結果を図6 の下図に示します。現実の地球と異なり、季節は半年の周期で変化します。日変化の気温の変化幅のようが季節変化の気温の変化の振幅よりも大きいのが特徴です。最高気温は290(= 13 ℃)、最低気温は253 K(= −20 ℃)程度ですから、側面は1年を通じて、人間が住める温度範囲にあるといえるでしょう。実際の地球の1 年平均した放射平衡温度は、−18 ℃ですから、それよりわずかに高いのです。

図7
図7 : 気温の鉛直分布
図8
図8 : 地上気温と正方形の中心からの距離との関係

ここで計算した温度は、真空状態の放射平衡温度ですが、大気が薄い場所では、ほぼこの温度と考えてよいでしょう。すなわち、側面の内陸部では、かなり快適な気温が維持されることになります。内陸部800 kmから1000 kmの気候は、実際の地球の熱帯の気候にかなり近いものになるでしょう。

気温は、大気の等圧面に沿って、ほぼ一定であると考えられます。すなわち、等温面は、ドーム状に立方体地球を覆います。そこで、正方形の中心から周辺部に向かうと、気圧も気温も次第に低下します。現実の地球で高い山に登ると、気圧も気温も次第に低下するのと似ています。気温の分布は、水蒸気量によって変化します。水蒸気量が温室効果の程度を決めるからです。ここでは、1気圧における水蒸気量を現実の地球大気と同じと仮定して、気温の鉛直分布を計算しました。100 気圧の水蒸気量は、現実の地球大気の100 倍です。また、反射率を85%としました(現実の地球は30%)。このときの放射平衡温度は201 Kです。

結果を図7 に示します。正方形の中心における地上気温は1210 Kです。正方形の中心部は、高圧であるばかりでなく、ものすごい高温の世界であることが分かります。空気によって、地表面の岩石の温度も高くなり、溶岩が赤く光っているのと同様に、光輝いていることでしょう。

気温は、上空に行くに従って、ほぼ直線的に減少します。下層では、8.3K/kmの気温減率です。

図8 は、等重力ポテンシャル面に沿って等温であると仮定して、地表面温度の分布を示したものです。等温度線は、同心円になります。しかし、地上気温を計算するには、もっと複雑な計算が必要で、実際にはもっと低い温度になります。

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【黄道面】

地球から太陽の動きを見たとき、太陽の背景となる星空に対して、天球上を1周しているように見えます。このときの太陽の通り道は、星占いでよく知られた、12個の星座を通り過ぎていきます。この太陽の通り道のことを黄道といいます。

図6

この黄道面は、地球の公転面と同じことになります。地球の赤道面とは傾いています。この傾きが、地球に四季をもたらす原因にもなっているのです。

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【K(ケルビン)】

温度を示す単位にはいくつかあり、絶対温度というはかり方で示したものをK(ケルビン)の単位で表します。摂氏C(℃)と絶対温度T(K)の関係は、

C = T – 273

絶対温度には、0 K より低い温度はあるのでしょうか。絶対温度が0 Kとなる温度を、絶対零度とよび、この温度より低い温度は存在しません。熱は、物質をつくっている原子や分子が振動して発生しているのですが、絶対零度では、この振動が止まってしまい、温度が発生できなくなってしまうためです。

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【放射平衡温度(ほうしゃへいこうおんど)】

太陽からは、膨大なエネルギーが、可視光線・赤外線・紫外線・X線など、電磁波として放射されます。これらすべてを太陽放射といいます。

一方、地球は太陽からの光のエネルギーのうち、およそ30%を反射し、残り約70%のエネルギーが地表まで届きます。この地球が受け取ったエネルギーを地球がすべて吸収し、そのエネルギーで温められた地球が、その熱をすべて宇宙空間に放出すると考えましょう。そうすると、地球の熱の出入りが常に一定になるため、地球の温度は一定になります。このときの、一定になったときの温度を、放射平衡温度といいます。

現在の太陽放射のとき、地球の放射平衡温度は255 K(= −18 ℃)となります。

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【等重力ポテンシャル面】

今、地球が水だけからできていると考えましょう。この水には、地球の重力による力だけがはたらくとすると、水面はおだやかに落ち着くはずです。このときの水面は、どこであっても重力の方向と垂直になります。このような面を、「等重力ポテンシャル面」と呼びます。

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