立方体地球で風の速さは遅い
立方体地球でも、海のある側面の大気は、海でできる球面をおおっています。その点は私たちの丸い地球と似ています。私たちの地球も、熱帯の太平洋は、ほとんど海洋におおわれており、緯度20度よりも低い緯度にある熱帯域の太平洋上の大気と、立方体地球の海上の大気とは同じような状態であると考えてよいでしょう。違っているのは海面気圧です。私たちの地球では1気圧ですが、立方体地球では9気圧でした。この違いは、気象にどのように影響するのでしょうか。
気圧が高いということは、空気の密度が大きいことを意味します。空気の密度が大きいと、同じ風速であれば、密度の大きいほうが、運動エネルギーは大きくなります。
大気循環は、熱エネルギーが運動エネルギーに変換されたものです。熱エネルギーの発生量は、立方体地球でも丸い地球でも、太陽放射量に関係しますので、同じ量だと考えられます。すると、変換される運動エネルギー量も同じようなものになるでしょう。ということは、9気圧の大気のほうが、風速は遅いことを意味します。9気圧の大気で吹く風は、1気圧の大気で吹く風よりも、風速が遅いのです。
大気循環のしくみ
丸い地球の大気は、図5に示すように、緯度によって、亜寒帯気団の循環と亜熱帯気団の循環の2つに分かれています。熱帯の大気循環は、亜熱帯気団の循環です。これをハドレー循環といいます。図6に示すように、ハドレー循環は、低緯度にある熱帯収束帯とその隣にある亜熱帯高気圧から構成されます。熱帯収束帯で上昇した大気が亜熱帯高気圧の部分で下降するのです。立方体地球の海面上でも、おそらく、ハドレー循環が形成されるでしょう。
熱帯収束帯では、大量の積乱雲が生まれては消えることをくり返しています。積乱雲の内部には、強い上昇気流があり、上空に運ばれた空気は、圏界面付近で南北の半球に広がって、亜熱帯高気圧のところで、ゆっくり下降します。下降気流の場所は、雲ができにくいので晴れており、太陽光線が海面まで届いて、海面を加熱し海水が蒸発します。蒸発によってできた水蒸気が、熱帯収束帯に運ばれて上昇するのです。
なお、この図では、赤道近くに積乱雲を描きましたが、実際の積乱雲は、赤道から少し外れた場所に発生します。しかも、季節によって、発生しやすい緯度は変化します。そのため、平均的な子午面循環の図を描くと、図6で示したよりも、上昇流の分布が広がり、図7のような循環になります。