台風は渦巻き
私たちの丸い地球の熱帯大気の特徴は、台風が発生することです。大気の巨大な渦巻ですが、その構造をみると、ハドレー循環の構造ととてもよく似ています。中心付近には積乱雲が発生し、その外側の広い範囲では下降気流が生じています。図6は、台風の鉛直断面図と考えても、それほどの間違いはありません。ただし、台風の渦の中心には台風の眼がありそこでは積乱雲が発生しません。積乱雲は、渦巻の中心を取り囲むようにリング状に発生します。図6の右端は、台風の中心ではなく、眼の壁と思ってください。
台風が、ハドレー循環と異なる点は、激しい渦巻の気流を伴う点です。なぜ、激しい渦巻が発生するのでしょうか。
それは、空気が地球とともに自転しているからです。無風であっても、空気は地球の上にあるので、地球と共に自転しています。熱帯の大気は、無風の状態でも回転しているというわけです。回転しているのに、無風と感じるのは、私たちも地球と共に回転しているからです。もしも、宇宙から熱帯大気を観察すると、地球と共にぐるぐるまわっている姿が分かるでしょう。
身近な渦巻きと台風のエネルギー
普通の状態では、空気は回転していても、風がそれほど強くありません。ところが、積乱雲の群れが発生すると、その場所に周囲から空気が集まってきます。空気が集まると、渦巻が強化されて、強い風が吹くようになるのです。
その原理は、風呂の栓を抜くと、栓の近くに竜巻のような渦巻ができることと同じです。わずかに回転していても、一点のまわりに集まると、渦巻が強くなる性質があるのです。
台風の運動エネルギーは、1018ジュールといわれます。そのエネルギー量は、広島型原子爆弾18,000個分のエネルギーに匹敵します。自然のエネルギーがいかに大きいか、分かるでしょう。台風の雨がもっている熱エネルギーはさらに大きいものです。ある見積もりによれば、1個の台風が解放するエネルギーは、日本列島で人々が消費する全エネルギー量の8年分になるそうです。