海の表面だけが対流
海はほとんど止まっている、といってもすべて完全に止まっているわけではありません。海の表面では水が蒸発して、塩分が高くなります。蒸発した水はまわりの高い山に霧として運ばれ、そこから冷たい地下水(真水)となって、海に戻ってきます。そして、この水が海の対流をつくります。といっても、この対流は海の表面だけ(図1に示した表層水と中層水の部分だけ)で、深いところまでは到達しません。一辺が30cmの立方体地球儀では、ビスケット1枚の深さの止まった海の上に、包み紙1枚分くらい(より薄い?)の厚さの対流する海が乗っているだけです。
層の間の不思議な現象
ここで、ちょっと不思議なことが起こります。海の表面で対流している部分は、2層に分かれていて、下の層は冷たくて塩分が薄く、上の層は温かくて塩分が濃くなっています。そのような2種類の水の境目では、図9のようなソルトフィンガーという現象がおこります。ここでは、上の濃い塩水がエノキダケのように落ちてきて、下の薄い塩水が逆ににょきにょきと上がっていきます。2つの水の境目でこういうことが起こると、熱よりも塩分のほうが境目を通して速く移動するのです。このソルトフィンガーは、エノキダケくらい小さな現象ですが、直径3,000kmの四角い地球の海にとって、とても重要な役割を果たします。
実は、丸い地球でもこのようなことは起こっているのですが、広い海のなかでこのような小さな現象の観察はとても難しいので、よくわかっていません。
海面は風とともに流れる
立方体の地球でも、海の上には風が吹いています。そして、この風が海の表面に水平方向の海流を作ります(図10)。この海流は、対流している海の表面の、さらに表層部分だけ(図8の表層水)で流れています。風は高気圧性の風なので、北半球では時計回り、南半球では反時計回りで、風の下の海もだいたいその方向に流れます。ただ、地球が自転している影響で、海の西のほうの海流が強くなり黒潮のような強い海流を作ります。このような状態は、まるい地球でもほぼ同じです。
立方体の地球の海では、北半球に台風が一つ、いつも存在するので、その部分はちょっと複雑な流れになります。