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公益財団法人 日本科学協会

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採択情報・選考総評

2026年度 笹川科学研究助成総評

笹川科学研究助成事業委員会委員長

 日本科学協会は35歳以下の若手研究者の育成とその研究の奨励を目的に1988年に笹川科学研究助成をスタートし、今回で39回目になります。研究助成対象は人文・社会科学および自然科学(数物・工学、化学、生物、複合、ただし医学を除く)など幅広い学問分野です。日本では、大学院生や研究生の身分では公的な研究助成に研究費の申請ができませんでしたので、画期的でした。今では文部科学省の科学研究費(日本学術振興会が所掌)に特別研究員として認められた大学院生(DC1,DC2)を対象とする申請枠ができ、また、民間の一部でも大学院生向けの研究支援が行われるようになりましたが、修士課程(博士前期課程)やDC3で申請できるのは、本助成以外は未だ稀です。

 最近は様々な分野で比較的高額な薬品を必要とする遺伝子解析が広く使われるようになり、また昨今の論文投稿料や海外渡航旅費の高騰などを考えて、2023年度から学術研究部門の1件当たりの申請上限金額を100万円から150万円に増額いたしました。その結果、2024年度から申請数がそれまでの20%以上増加して1,400件以上、研究費の申請額も18億円を超えています。

 今年度は厳正な審査を経て学術研究部門と実践研究部門を合わせて287件が採択されました。申請数が1,448件と多かったため採択率は19.8%と20%を割り込みました。学術研究部門の採択者279件の74.2%は大学院生で、残りのほとんどが35歳以下の非常勤または任期付き雇用研究者です。学術研究部門の申請では、女性研究者が36.2%、留学生及び外国籍研究者が11.1%で、傾向はこのところあまり変わっていません。今年度で、笹川科学研究助成の助成総数は11,805件になり、今や、国内で活躍しているすべての年齢層で助成を受けたOB・OGが活躍していて、大学や研究所の研究者のおよそ10人に1人といっても過言ではありません。39年間の助成研究費は、総額が約74億円にのぼります。これはひとえに日本財団のご支援によるものです。

 1997年には、海洋・船舶科学分野の支援強化を目指して学術研究部門に海洋・船舶科学系を新設し、2018年度まで22年間募集しました。しかし、分野的な偏りが感じられ、広範囲な海の研究分野を支援するため、2019年度に海洋・船舶科学系を廃止し、代わりに学術研究部門のすべての系に「海に関係する研究」のチェック欄を設けて募集したところ、従来の2倍以上の申請があり、研究分野も大きく広がりました。以来、学術研究部門の全分野で「海に関係する研究」を募集しています。

 学生・期間雇用研究者など、現行制度では研究助成の受けがたい立場の若手研究者に本事業はかなり周知されてきました。ただ、採択課題を見ると若手研究者に期待される萌芽性・新規性・独創性のある研究が必ずしも多くありません。昨今、指摘されるような「日本全体としての活力低下」があるとすれば、萌芽性・新規性・独創性のある研究自体の全国的な減少が懸念されます。加えて、学術研究部門の申請の51.0%が生物系で、数物・工学系、化学系、複合系の申請にも生物課題が含まれることを考えると、全体の研究申請に占める生物分野の割合は極めて高く、年々この傾向が強くなっています。この状況は本研究助成事業だけでなく、国内外の他の研究助成事業でも同じと聞きます。

 それぞれの専門分野の申請傾向については、分野責任者と各選考委員長の総評を見ていただくとして、全体に共通している点を三つ上げます。一つは、多くの研究が先鋭化していることです。研究成果を上げる点では素晴らしいことですが、ともするとその研究の位置づけを見失う危険があります。是非、少し引いた位置から自分の研究を眺める余裕を持っていただければと考えます。二つは、様々な科学・技術が開発された結果、無理矢理最新技術を使おうとする研究です。研究は必ずしも最新技術を使うことではありません。三つは、それぞれの研究分野、あるいは科学・技術全般を俯瞰した視点、または物事の考え方を変えることにつながりそうな研究課題が余り見当たらないことです。

 もう一つ気になることはこのところの生成AIの著しい進歩です。本研究助成でも生成AIを利用して作成されたと思われる申請書が散見されます。本研究助成は若手研究者の育成を主な目的としていますので、生成AIを利用すると研究者にとって重要な独創性や創造性が十分に磨かれない可能性があります。さらに新しい発想がAIを通じて拡散されてしまう恐れもあります。生成AIとは良い距離感を保ち、独創性のある研究計画書を作られることを期待しています。

 実践研究部門では、2013年度から学芸員・司書等が行う資料の調査・研究と、教員・NPOなどに所属する人たちが行う調査・研究を支援する問題解決型研究の二つの窓口で申請を受け付けてきましたが、問題解決型研究に関しては他の支援も充実してまいりましたので、2026年度から問題解決型はとりやめて学芸員等の支援の充実をはかることにしました。そのため、従来の図書館と博物館に加えて美術館、科学館、植物園、動物園など幅広く募集した結果、これまで応募のなかった機関を含めて従来の2倍以上となる40件の応募がありました。

 研究助成を受けられた方には、翌年2月中旬に研究完了報告書を提出していただき、それらをもとにして各選考委員会で評価いたします。2007年度から、優秀な成果、あるいは創意と工夫にあふれた真摯な研究姿勢で将来性の期待できる研究者には研究奨励賞が授与されています。学術研究部門の6系(生物系は生理・発生・分子・生花・遺伝などと分類・生態・農・水産などの2分野)と「海に関係する研究」、ならびに実践研究部門からそれぞれ2人ずつ合計16名が選ばれ、2026年4月17日(金)の研究奨励の会で研究を発表していただき、賞状と副賞が授与されます。発表の様子は、後日、Web上でも映像として公開いたします。

 さらに、日本で活躍している笹川科学研究助成のOB・OGには助成後もいくつかの支援を行っています。一つは、2001年度に始めた海外での研究発表の旅費と参加費用の支援で、2025年度は127件の申請に対し85件を助成しました。オンライン開催を含め、国際集会での研究発表に対してきめ細かな支援を進めております。二つは、OB・OGと企業との関係の構築のための企業関係者を対象としたOB・OGの研究発表会の開催で、重点研究支援分野である海洋関連をテーマに、第1回は「洋上風力発電等と関連技術について」を2019年9月に開催し、OB・OGと企業関係者の双方から好評をいただきました。COVID-19の影響で3年間休み、2023年10月に第2回「海の産業利用」、2024年11月に第3回「ブルーエコノミーとその加速に向けて」、2025年11月に第4回「電力に代わり天然冷熱を利用する~巨大なエネルギーを必要とするデータセンターの空調を考える~」を開催しました。三つは、OB・OGが進めている研究を社会に広く知ってもらうため、OB・OGを出版社に紹介して科学一般書を出版する支援です。2021年8月に松田英子東洋大学社会学部教授著の「夢と読み解く心理学」(ディスカヴァー携書)、2025年10月に工藤栄国立極地研究所教授著の「語り尽くせない南極の自然~生物学者がみた教科書にない南極の自然と生物」(成山堂書店)が出版されました。引き続いて一般書出版を希望するOB・OGを出版社に紹介して出版の実現に向けた努力を続けています。以上の支援を充実させていくとともに、その他の支援も随時進めてまいります。

 このように笹川科学研究助成事業は、日本国内で活躍する優れた若手研究者を発掘して長い目で支援し、日本をはじめとして世界の将来の科学・技術の発展に寄与してまいります。

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