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公益財団法人 日本科学協会

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採択情報・選考総評

2026年度 数物・工学系総評

数物・工学系選考委員会委員長

 数物・工学系の申請課題は、宇宙・地球科学、素粒子・原子核物理学、数理科学・情報科学、物性物理学、材料科学、計測工学、機械工学、ロボット工学、エネルギー・環境科学、都市・建築工学、医療工学、健康科学など、実に広い分野に跨っています。2026年度の申請では、情報科学・データサイエンスや計測工学の申請が特に多く、その対象は広範囲にわたっていました。特に、情報科学や計測工学では、ヒューマンサイエンスに関わる学際的な課題が多く、社会の要請に対する意識の強さが反映されています。
 応募者の年齢や研究段階は、学部4年生や修士課程、博士課程、博士研究員、助教に至るまで非常に幅広く、審査にあたっては慎重な判断を要しました。評価に関しては、現時点での完成度のみならず、将来的な研究の広がりや国際的な活躍の可能性も考慮し、若い研究者の芽を育て、将来性のある研究を支援するという観点も重視しました。採択・不採択の結果によらず、若い研究者が示した挑戦的で意欲的な取り組みは高く評価されるものであり、今後の更なる活躍が期待されます。
 また、近年の実験技術や装置の進展を好機と捉え、地道ではあるものの、これまで十分に行われてこなかった実験に積極的に挑戦している研究課題もありました。このような取り組みは新たな価値を生み出すものであり、若い研究者が主体的に挑戦している姿勢を心強く感じています。各分野での総評は下記の通りです。

 宇宙物理学や素粒子・原子核物理学分野では、素粒子理論と宇宙物理学が密接に関連した研究課題が多くありました。また、広い意味での素粒子に関連する研究課題が例年以上に多数申請されており、挑戦的な研究課題が多くありました。素粒子・原子核物理学の分野は、高度な数学的技法が要求される分野であり、挑戦的で独創性のある研究で成果を出すには時間がかかります。特に学部4年生や博士前期課程の申請者の中には学習レベルの域を出ておらず、1年間でどの程度の研究成果が出るのか疑問に残る申請が複数ありました。博士後期課程の学生や若手研究者が申請した素粒子物理学の分野では、非常にレベルの高い先進的な研究が多くあり、今後の成果が期待されます。

 数理科学・情報科学の分野では、深層学習や人工知能(AI)を活用した独創的で特徴のある研究課題が多くありました。今後、独自に開発したソフトウエアなどの成果が公開され、広く利用されることが社会貢献や波及効果に繋がるものと思われます。また、AIを用いた研究は時機を得た研究課題であり、今後、研究対象の広がりが期待できます。これらの技術は科学の発展を力強く後押しする重要な手段ですが、得られた結果の解釈や数理科学的な妥当性については、慎重な検討が求められます。AIという強力な道具を使いつつも、その背後の数理や物理現象を深く洞察する姿勢が必要と思われます。

 物性物理学の分野では、スピントロニクスやトポロジカル絶縁体の磁性や輸送現象などの研究課題が多く、時代の先端的研究の傾向が強い印象を受けました。しかしながら、この分野は国内外を問わず非常に多くの研究者が参画している分野であり、流行を追うだけではなく、斬新な発想による特徴づけが望まれるところです。

 材料科学の分野では、時代の要請に応えた熱電変換材料研究などの研究が多数あり、いずれも創意・工夫のある研究課題でした。特に、独創的で新奇性のある研究課題が大学院生の研究に多く見られ、今後の発展が大いに期待されます。

 計測工学やロボット工学の分野では、自律移動型ロボットの行動環境の把握と制御、医療現場への展開、生物の構造と知覚情報処理の模倣、新規センシングシステム技術、農業分野や医療分野への最新情報技術の活用展開、およびそれらの基礎となる物理現象の研究やプロセス技術に関する研究課題などに優れたものが多く見られました。また、現代社会に対応した研究課題も多く見られ、将来の波及効果が大いに期待されます。なお、計測工学やロボット工学の研究課題は、今後益々増加するものと思われます。

 エネルギー・環境科学分野では、人文・社会科学系の研究方法をとっているものが多く、最近は他分野に及んでいるものもあります。現代社会にあって、この傾向は必然的であり、増加するものと思われます。また、建築工学や都市工学の分野では、現代社会が直面している問題に対して最新の情報科学を活用して取り組む研究課題が多くありました。

 今年度、学部4年生と大学院生の申請は81%を占めており、総じて独創的で挑戦的な研究課題が多くありました。なお、今回の申請では博士研究員や助教・特任助教の申請も多くあり、研究環境の厳しさを反映しているものと思われます。
 必要経費に関しては、研究成果発表のための会議参加費、渡航費、論文投稿費が大半を占めている申請が複数あり、中には、これらの経費のみの申請もありました。以前からこの傾向はありましたが、今回は特に多い印象を受けました。本来、研究課題を遂行する上での必要経費と研究成果発表のための経費のバランスを認識する必要があります。
 今回採択されなかった研究課題でも、今後に期待できるものが非常に多くあり、次回の申請に期待しています。
 なお、大学の重要な使命の一つは、才能ある学生や若手研究者を育て、未来につなげることにあります。独創的で将来性のある研究課題に取り組んでいる学部生や大学院生が、笹川科学研究助成を受けて研究を促進することは、若手人材育成にとって非常に重要であると考えられます。

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